青色えのぐ


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中間報告

はじめに

すこし執筆から遠ざかっていたこともあり、自分自身、整理するつもりで書きました。力量不足のせいで本来なら本文中に記述すべき要素をこちらに書いている点もいくらかありますが、さほど重要でないことですのでいろいろと気にしない方向で。

この作品がぶじ完結し、再編集・再構成した「完全版」に到達した暁には、きちんと盛り込んでゆきたい。とまあそんな感じで、2007年11月1日記述。

人物について

ケイ(私)

主人公。七月の頭、雪割荘の一室で目をさます以前の記憶を失っている。自らが置かれた状況に、はじめこそびくびくしていたが目に見えて差し迫った危機がないと知るや、わりと余裕が出てきた。基本、ことあるごとにびびっている小心者。細身できれいな顔立ちにくせのない黒髪と、自他共に認める“お人形さん”のような容貌で人目を引くが、本人は頼りなげな自身の身体に不満を感じている様子。蒼と並べるとかなり和風に見える。

蒼(あお)

ケイが目覚めた当日、一緒に運び込まれたと思われる荷物を検品すると“大きい革製の鞄”のなかで眠っていた西洋人形。刷り込みの要領か、ケイがあるじであると主張し、その言葉のとおりに付き従う。純白の長袖ブラウスに青いケープを羽織り、裾口が細い青い半ズボンという装いで、栗色の柔らかな髪に滑らかな肌、意志の灯った瞳ととても精巧な造り。家事全般を華麗にこなす彼女ではあるが毎朝ケイを起こすのに苦労している。

氷室美弥子(ひむろ・みやこ)

消息が途絶えがちの“お爺さま”から唐突に「客人の世話をしろ」と言いつけられ、雪割荘を任された(自由に使ってよいとのことで実質彼女の城である)。冷ややかな瞳が印象的で、ケイいわく「気の弱い者ならうっかりひれ伏しかねない威厳と美貌を備えている」。低血圧なのか目覚めから午前中にかけて億劫そうに呆けていることが多く、その悩ましげな姿にケイや朝比奈は戸惑うことも。クロスワードパズルにはまっているようだ。

夕凪沙耶(ゆうなぎ・さや)

元気いっぱいの女子高生。活発そうな雰囲気とショートヘアがとてもよくあっている。氷室とはじつの姉妹のように親しく、彼女の通う高校を中心とした円の中に実家と雪割荘が含まれており親の許しもあって雪割荘に越してきた。見慣れぬ街で道に迷っているところ徘徊中のケイに出会い、心奪われる。以来ひたすらケイに懐いているが、氷室はそのことを快く思っておらず、そのケイにしても、夕凪の近すぎる距離感覚に困惑を隠せない。

朝比奈貢(あさひな・みつぐ)

わりと売れているらしい作家、という事実を知らなければ、ただの昼夜逆転型の引きこもりに見える。しかし朝比奈が作る料理は住人たちにとても好評で、彼らの胃袋の平穏を預かる身であることを考慮すれば、過小に評価するわけにいくまい。また、雪割荘の維持管理は最古参の彼が行っている。物腰が柔らかで落ち着いており、風変わりな住人たちのなかで最もまともな人物でもある。ちなみに筆名は内緒らしい。

黒スーツの男

眠っているケイといくつかの荷物を抱えて背負って204号室に運び込んだ男。お爺さまからの紹介状により朝比奈は彼を信用したが、彼自身は多くを語らずに立ち去った。特徴らしい特徴がないようで、全身を包む黒いスーツくらいしか印象に残らない。街中で日々感じる視線を、ケイは彼によるものだと疑っている。

A子さん(えーこさん)

現在ケイが滞在している204号室の、前住人。便宜上ケイがそう呼ぶことにした彼女は、数年前から姿を見せていないらしいが、日常生活に必要な物資はほとんど残されたままだった。小ぎれいに整えられた室内や私物の様子から見るに、几帳面な人物であったことが窺える。朝比奈のみ、彼女と接したことがある。

お爺さま(おじいさま)

客人の世話ていどと引き換えに氷室にぽんと不動産を譲ってしまう辺り、よくも悪くもまともな人種ではないだろう。今回ケイが雪割荘に運び込まれたのも彼が糸を引いていると考えられるが、詳細は不明。ところで雪割荘というネーミングセンスは彼のものであり、一般的でない雪割荘の構造もまた彼によるものらしく、ますます胡散臭い。

そのほかの用語等

ケイがいつも見ている夢

幻想的な、深くほの暗い森のなかをひとりで歩いている夢。些細なちがいこそあれ、毎回たいへん似通った世界だ。さて人間は寝ているあいだ必ず夢を見ている、といわれている。しかし、目が覚めた瞬間から外界からの刺激により忘却が始まり、ほとんどの場合、記憶の片隅にすら残らない。その点、ケイは初日の“目覚め”の一回め以外を鮮明に記憶にとどめているようだが、これは夢に対して注意深くなっているから。

「街」

都会と呼ぶには心もとないが田舎と呼ぶほど過疎地でもない。街の中心部に駅を構え、周辺に主要な商店街やら娯楽施設が固まり活気づき、遠ざかるにつれ閑静な住宅街へと変わってゆく。近場に森林公園や海水浴場を有し、それなりに外部から遊びにくる人間がいるらしい。

雪割荘

外観は普通の民家。一階部分も普通の民家。ただし後から増築されたらしい二階はいろいろ無茶な構造をしている。四つある個室にはそれぞれ各室のみで生活を完結させられるだけの設備が整っていて、氷室以外の住人は二階の部屋をあてがわれている。民宿ふうといえばそうかもしれない。また、204号室だけは特別で客人専用の部屋になっており、ケイによると「隠れ家のような性質」。

「花屋」

氷室と親しいと見受けられる妙齢の女性(きれいなお姉さん)が店番を勤める花屋。看板が壊れているのか、そもそも設置していないのか、店名はわからない。店番の女性には、熱烈なファンがいるとかいないとか耳にする。

「洋菓子店」

ケイがいうに「ドイツ語の男性名と思われる店名」らしい。街のはずれにある小さな店で、繁盛しているとは言いがたい。飲食席があり、洋菓子を食べてゆくことができる。味はたしかで申し分がないので、立地や宣伝に問題があるのだろう。

記憶喪失

心理的なショックや頭部への衝撃等によって記憶の一部または大半をただしく思い出せない、もしくは失ってしまう現象。過去の記憶への障害(思いだせない)を逆行性健忘、未来の記憶への障害(覚えられない)を順行性健忘といい、ケイの場合は前者である。

ソフトクリーム

ふわふわのクリームが舌のうえで溶けて甘みがひろがり、コーンは単なる器でなくさくさくとした食感がまた新たな刺激となり、外観はとても涼しげで、味だけでなく目で見てもたのしめるすぐれもの。ケイの大好物。「紀元前2000年頃、中国で牛乳を煮て、雪で冷やし、柔らかくして食べられたのが始まりと言われている。」(Wikipediaより)

ここまでの時系列

2.雪割荘(ゆきわりそう)

七月一日〜七月三日

主人公の目覚めと、氷室・朝比奈とのやり取り。記憶がないことに気づいた主人公は、不意に手にしたパレットナイフに刻まれていたイニシャル「K・F」から「ケイ」と名乗ることにした。また、蒼との出会いで心の支えを得る。

3.他人を見る目(たにんをみるめ)

七月三日

だいぶ混乱が収まり、生活に必要な物資を買いにケイが街を出歩くと、おかしな視線の感覚に気がつく。その正体を探るうちにトラブルが起き、夕凪と出会うきっかけとなった。また、氷室の、夕凪には甘い意外な一面を垣間見た。

1.目覚めの確認(めざめのかくにん)

七月五日

暇潰しと情報集めを兼ねて街中を徘徊するケイ。考えていたより日差しが強くてへばり、体力面に難があると気づいたようだ。一休みしていた公園では、見知らぬ女の子に懐かれた。ケイは、自身がなにかしらそういう雰囲気を放っているのかもしれない、と考えた。

4.ミルキーウェイ(みるきーうぇい)

七月六日〜七月七日

いつも見ている夢と自身の関係や、蒼について疑問と思考。でも答えは出ないのでさじを投げた。七日になると朝から住人たちの行動に違和感を覚えるが、それはなじみきれずにいたケイを温かく迎えるイベントの下準備だった。


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